セブルスに連れられ、グリモールド・プレース十二番地にやってきたルナは、そこにいたシリウス・ブラックの姿に驚いた。セブルスがリビングに入ったとき、ブラックは怪訝そうにソファからこちらを見た。それから、こちらをじっと見て、慌てて駆け寄ってきた。
「ルナ? ルナなのか?」
とりあえず頷けば、ブラックは感極まったように抱きしめてきた。しかし、すぐにセブルスによって引き離された。状況が把握できないルナは、セブルスを見上げた。セブルスは「ブラックは無実だった」と吐き捨てるように言った。
「私のことを知ってるの?」
「もちろんさ! ジェームズとリリーはよく君とハリーのことを書いてよこしたよ――ああ、君はリリーの生き写しだ……」
ブラックは自分を昔からの知り合いのように、親しみを込めた目をしていた。ルナは困惑しながらも、ブラックは悪い人ではなさそうだとわかり、ほっとした。
「元気だったかい? ルナ……」
「感動の再会中に申し訳ないが」
セブルスが口を挟んだ。
「ルナは私の養子になっている。私がルナの親だ……まあ、君が親ぶりたいのはわかるが――」
シリウスはセブルスを睨んだ。彼はセブルスより背が高かった。
「俺はハリーとルナの後見人だ、その権利はある」
「どうだか……まともに働いてない今の君に、その権利があるとは思えないが」
二人の間にぴりついた空気が走った。ルナは衝動的にセブルスの杖腕をそっと抑えた。そのとき、リビングのドアが開き、がやがやと騒がしい声が聞こえてきた。
「ルナ! 来たんだね」
懐かしい声に振り返れば、ルーピンが立っていた。
「ルーピン先生!」
「まあ、この子がルナ?」
紫の髪をした女性が駆け寄ってきた。
「あなたのことは聞いてるわ、私はトンクスよ。よろしくね」
「ハリーの妹か」
ムーディがまじまじとこちらを見た。その魔法の目に見つめられると、悪いことをしていなくても後ろめたくなってしまうから不思議だ。
「……ルナ」
セブルスに呼びかけられ、見れば彼は眉間に皺を寄せ、この空間からいち早く出たいと思っていそうだった。
「私は出る。休暇中はここで過ごせ」
「そろそろ夕飯みたいですけど……?」
恐る恐る言ったトンクスにセブルスは睨みを返し、さっとマントを翻して出て行った。
「何なの、あの人は!」
ソファにどさりと座ったトンクスに、ブラックは言った。
「あれはああいう奴なんだ、仕方ない……ルナ、君はあいつに毒されてないかい?」
「……大丈夫。セブルスはいい人よ」
ルナはそう言ってみたが、皆肩をすくめただけだった。
次の日にはロンとフレッドたち、それからハーマイオニーがやってきた。ルナたちは会議には参加できなかったが、思い思いに楽しんで過ごした。
「ああ、ハリーにここにいるって教えてあげたいわ」
ロンたちはハリーに何も教えてはならないと、ダンブルドアに誓ったようだった。ことあるごとにハーマイオニーはそう言い、ルナはそのたび「大丈夫よ」と彼女を落ち着かせた。けれど、ハリーの怒りはとてつもないものだった。
「それじゃ、きみたちは会議には参加してなかったんだ。だけど、それがどうだって言うんだ! きみたちは、ここに居たんだ。そうだろう? きみたちは一緒に居たんだ! 僕は、一ヶ月もダーズリーの所に釘づけだ! だけど、僕は、きみたち二人の手に負えないようなことでもいろいろやり遂げてきた。ダンブルドアはそれを知ってるはずだ――賢者の石を守ったのは誰だ? リドルをやっつけたのは誰だ? きみたちの命を、ディメンターから救ったのは誰だって言うんだ? 前の学年で、いったい誰が、ドラゴンやスフィンクスや、ほかの汚いやつらに立ち向かった? 誰が、あいつの復活を目撃した? 誰が、あいつから逃れることが出来た? 僕だ!」
ルナはそのとき、ハリーたちと同じ部屋にいなかった。けれどハリーの怒号はルナのいる部屋まで聞こえてきた。ルナは驚いて、ハリーを静めようと彼らのいる部屋に駆け込もうとしたが、途中で現れたフレッドに腕を掴まれた。
「ルナ、君もおいで」
「なに――?」
次の瞬間、バシッという音と共にハリーたちの部屋の中央に立っていた。
「いい加減にそれやめて!」と、ハーマイオニーが言った。
「やあ、ハリー」ジョージが、ハリーににっこりした。「君の甘い声が聴こえたように思ったんでね」
「怒りたいときは、そんなふうに抑えちゃ駄目だよ、ハリー。全部吐いちまえ」と、フレッドもにっこりしながら言った。「五十マイル離れたところに、君の声が聞こえなかったやつが一人ぐらい居たかもしれないじゃないか」
「君たち二人とも、それじゃ姿現わしテストに受かったんだね?」
ハリーは不機嫌なまま言った。
「優等でさ」
フレッドの手には長い肌色の紐を持っていた。
「階段を下りたって、三十秒も余計にかかりゃしないのに」と、ロンが言った。
「弟よ、『時はガリオンなり』さ」とフレッドが言った。ハリーがちょっと眉を吊り上げたので、「とにかく、ハリー、君の声が受信を妨げているんだ。伸び耳のね」と、フレッドが説明を付け加え、紐を掲げて見せた。「下で何してるのか、聞こうとしてたんだ」
「気をつけたほうがいいぜ」と、ロンが耳を見つめながら言った。「母さんが、またこれを見つけたら――」
「その危険を冒す価値ありだ。いま重要会議をしてる」と、フレッドが言った。
ドアが開いて、長いふさふさした赤毛が現れた。
「ああ、ハリー! いらっしゃい」と、ロンの妹、ジニーが明るい声で挨拶した。「あなたの声が聞こえたように思ったの」
フレッドとジョージに向かって「伸び耳は効果なしよ。お母さんがわざわざ厨房の扉に『侵入よけ呪文』をかけたもの」と、ジニーが言った。
「どうして、わかるんだ?」と、ジョージががっかりしたように言った。
「トンクスが、どうやってそれを発見するかを教えてくれたわ」と、ジニーが言った。「扉に何か投げつけて、それが扉に接触できなかったら、扉は『進入よけ』されているの。階段の上から糞爆弾をポンポン投げつけてみたけど、みんな撥ね返されちゃった。だから、伸び耳が扉の隙間から忍び込むことは絶対できないわ」
フレッドが深いため息をついた。
「残念だ。あのスネイプのやつが何をするつもりだったのか、どうしても知りたかったのにな」
「スネイプ!」と、ハリーはすぐに反応した。「ここに居るの?」
「ああ」と、ジョージは慎重にドアを閉め、ベッドに腰を下ろしながら言った。ジニーとフレッドも座った。「極秘の報告をしてるんだ」
「いやな野郎さ」と、フレッドがのんびりと言った。
「あの人は、もう私たちの味方よ」と、ハーマイオニーが咎めるように言った。
ロンがフンと鼻を鳴らした。
「それでも、嫌な野郎は嫌な野郎さ。あいつが俺たちのことを見る目つきときたら……けどルナに対しては違うな」
「ああ、ルナと話してるときのあいつの表情、君に見せてあげたかった」
ジョージがハリーに言った。
「あいつ、熱のこもった、ねっとりした目でルナを見るんだ――ルナ、気をつけた方がいいぜ。あいつは君に惚れてる」
「そんなこと、絶対にないわ」とルナは笑って言った。
「私はセブルスの娘だもの」
「けど、血は繋がってないんだろう? あいつ、禁断の愛に手を染めようとしてるぜ?」
フレッドが冗談めかして言い、皆が笑った。
「ビルも驚いてたわ、ルナと話すときと自分たちと話すときで全然違うって」と、ジニーが言った。
「ビルも、ここに居るのかい?」と、ハリーが尋ねた。「エジプトで仕事をしてると思ってたけど?」
「事務職を希望したんだ。家に帰って、『騎士団』の仕事ができるようにって」と、フレッドが言った。「エジプトの墓場が恋しいって言ってる。だけど」フレッドがニヤッとした。「その埋め合わせがあるのさ」
「どういう意味?」
「あの、フラー・デラクールってやつ、覚えてるか?」と、ジョージが言った。「グリンゴッツに勤めたんだ。えーいご(英語)が上手くなるよーにって――」
「それで、ビルがせっせと個人教授をしてるのさ」フレッドが、クスクス笑った。
「チャーリーも、『騎士団』だ」と、ジョージが言った。「だけど、まだルーマニアに居る。ダンブルドアは、なるべくたくさんの外国の魔法使いを仲間にしたいんだ。それでチャーリーは、勤務が休みの日にいろいろと接触してる」
「それは、パーシーが出来るんじゃないの?」と、ハリーが尋ねた。
「どんなことがあっても、父さんや母さんの前でパーシーのことを持ち出さないで」と、ロンが緊張した声でハリーに言った。
「どうして?」
「なぜって、パーシーの名前が出るたびに、親父は手に持っているものを壊しちゃうし、お袋は泣きだすんだ」と、フレッドが言った。
「大変だったのよ」と、ジニーが悲しそうに言った。
「あいつなんか、居ないほうが清々する」と、ジョージが言った。
「何があったんだい?」と、ハリーが言った。
「パーシーが、親父と言い争いをしたんだ。親父が、誰かとあんなふうに言い争うのをはじめて見た。普通はお袋が叫ぶもんだ」
「学校が休みに入ってから一週間目だった」と、ロンが言った。「俺たち、『騎士団』に加わる準備をしてたんだ。パーシーが家に帰って来て、昇進したって言った。」
「冗談だろ?」と、ハリーが言った。
「ああ、俺たち全員が驚いたさ」と、ジョージが言った。「だって、パーシーはクラウチの件でずいぶん面倒なことになったからな。尋問だとかなんだとか。パーシーは、クラウチが正気を失っていることに気づいて、それを上司に知らせるべきだったって、皆がそう言ってたんだぜ。だけど、パーシーのことだから、クラウチに代理を任せられて、そのことで文句を言うはずがない」
「それじゃ、なんで魔法省はパーシーを昇進させたの?」
「それこそ、僕らも変だと思ったところさ」と、ロンが言った。「パーシーは、大得意で家に帰って来た――いつもよりずっと大得意さ。そんなことが有り得るならね――そして、父さんに言ったんだ。ファッジの大臣室勤務を命ぜられたって。ホグワーツを卒業して一年目にしちゃ、すごくいい役職さ。大臣付下級補佐官。パーシーは父さんが感心すると期待してたんだろうな」
「ところが、親父はそうじゃなかった」と、フレッドが暗い声を出した。
「どうして?」と、ハリーが言った。
「うん、ファッジはどうやら、魔法省を引っ掻き回して、誰かダンブルドアと接触している者が居ないかって調べてたらしい」とジョージが言った。
「ダンブルドアの名前は、近頃じゃ魔法省では嫌われ者なんだ」と、フレッドが言った。「ダンブルドアが、『例のあの人』が戻ったと言いふらして問題を起こしてるだけだって、魔法省じゃそう思ってる」
「親父は、ファッジ大臣が、ダンブルドアと繋がっている者は机を片づけて出て行けって、はっきり宣言したって言うんだ」と、ジョージが言った。「問題は、ファッジが親父を疑ってるってことなんだ。親父がダンブルドアと親しいって、ファッジは知ってるから。それに、親父はマグルに好意を持っているから少し変人だって、ファッジはずっとそう思ってた」
「だけど、それがパーシーとどういう関係があるの?」と、ハリーは尋ねた。
「そのことさ。ファッジがパーシーを大臣室に置きたいのは、家族とダンブルドアを――スパイするためでしかないって、親父はそう考えてる」
ハリーは、低く口笛を吹いた。
「それじゃ、パーシーがさぞかし喜んだでしょう」
ロンが虚ろな笑い方をした。
「パーシーは完全に、舞い上がってたよ。それでこう言ったんだ――うーん、ずいぶんひどいことをいろいろ言ったな。魔法省に入って以来、父さんの評判がぱっとしないから、それと戦うのに苦労したとか、父さんは何にも野心がないとか、それだからいつも――ほら、俺たちにはあんまりお金が無いとか、つまり――」
「なんだって?」と、ハリーは信じられないという声を出し、ジニーは怒った猫のような声を出した。
「そうなんだ」と、ロンが声を落として言った。「そして、ますます酷いことになってさ。パーシーが言うんだ。父さんがダンブルドアと親しくしているのは愚かだとか、ダンブルドアは大きな問題を引き起こそうとしているとか。父さんはダンブルドアと落ちるところまで落ちるんだとか。そして、自分は――パーシーのことだけど、どこに忠誠を誓うかわかっている、魔法省だ、とか。もし、父さんと母さんが魔法省を裏切るなら、もう自分はこの家の者じゃないってことを、皆にはっきりわからせてやるって。そして、パーシーはその晩、荷物をまとめて出て行っちゃったんだ。いま、ここ、ロンドンに住んでるよ」
「母さんは気が動転してさ」と、ロンが言った。「わかるだろ――泣いたりとか。母さんはロンドンに出て来て、パーシーと話をしようとしたんだ。ところが、パーシーは母さんの鼻先でドアをぴしゃりさ。職場で父さんに出会ったら、パーシーがどうするかは分からない――無視するんだろうな、きっと」
「だけど、パーシーは、ヴォルデモートが戻って来たことを知ってるはずだ」と、ハリーが考えながら言った。「バカじゃない。きみのお父さんやお母さんが、何の証拠もないのにリスクを背負い込むことなんてしないってわかるはずだ」
「ああ、うーん、きみの名前も争いの引き合いに出された。パーシーが言うには、証拠はきみの言葉だけだって――なんて言うのかな――パーシーは、それじゃ不十分だって」
「パーシーは、『日刊予言者新聞』を真に受けてるのよ」と、ハーマイオニーが厳しい口調で言うと、全員が頷いた。
「いったい、何のこと?」と、ハリーが皆を見回しながら尋ねた。どの顔も、慎重にハリーを見つめていた。
「あなた――あなた、読んでなかったの、『日刊予言者新聞』を?」と、ハーマイオニーが恐るおそる尋ねた。
「読んでたさ!」と、ハリーは言った。
「読んでたって――あの――完全に?」と、ハーマイオニーがますます心配そうに言った。
「隅から隅までじゃないけど」と、ハリーは言い訳した。「ヴォルデモートの記事が載るなら、一面大見出しだろう? 違う?」
皆が、その名前を聞いてぎくりとした。ハーマイオニーが急いで言葉を続けた。「そうね、隅から隅まで読まないと気が付かないけど。でも、新聞に――うーん――一週間に数回はあなたのことが載ってるわ」
「でも、僕、見なかったけど――」
「一面だけ読んでたらそうね。見ないでしょうね」と、ハーマイオニーが首を振りながら言った。「大きな記事のことじゃないの。決まり文句のジョークみたいに、あちこちに潜り込んでるのよ」
「どういうふうに――?」
「かなり悪質ね、はっきり言って」と、ハーマイオニーは無理に平静を装った声で言った。「リータの記事を利用してるの」
「だけど、リータはもうあの新聞に書いていないんだろ?」
「ええ、書いてないわ。約束を守ってる――選択の余地はないけどね」と、ハーマイオニーは満足そうに付け加えて言った。「でも、リータが書いたことが、新聞がいまやろうとしていることの足掛かりになっているの」
「やるって、何を?」と、ハリーは焦って言った。
「あのね、リータは、あなたがあちこちで失神するとか、傷が痛むと言ったとかって書いたわよね?」
「ああ」
「新聞は、そうね、あなたが思い込みの激しい目立ったがり屋で、自分を悲劇のヒーローだと思っている、みたいな書き方をしているの」と、ハーマイオニーは一気に言いきった。こういう事実は大急ぎで聞くほうが、ハリーにとって不快感が少ないとでもいうかのようだった。「新聞は、あなたを嘲ける言葉を、しょっちゅう潜り込ませてるの。信じられないような突飛な記事の場合だと、『ハリー・ポッターにふさわしい話』だとか、誰かがおかしな事故に遭うと、『この人の額に傷が残らないように願いたいものだ。そうしないと、次に我々はこの人を拝めと言われかねない』とか――」
「僕は、誰にも拝んで欲しくなんかない――」と、ハリーが熱くなって喋りはじめた。
「わかってるわよ」と、ハーマイオニーは、びくっとした顔で慌てて言った。「私にはわかってるのよ、ハリー。だけど新聞が何をやってるか、わかるでしょう? あなたのことを、まったく信用できない人間に仕立て上げようとしてるのよ。ファッジが糸を引いているわ、そうに決まってる。一般の魔法使いに、あなたのことをそんなふうに思い込ませようとしてるのよ。愚かな少年で、有り得ないバカげた話をする。なぜなら、有名なことで得意になっていて、ずっと有名で居たいから」
「僕から言い出したわけじゃない――望んでもいない――ヴォルデモートは僕の両親を殺したんだ!」と、ハリーは急き込んで言った。「僕が有名になったのは、あいつが僕の家族を殺して、僕を殺せなかったからだ! 誰がそんなことで有名になりたい? 皆にはわからないのか? 僕は、あんなことが起こらなかったら――」
「わかってるわ、ハリー」と、ジニーが切実に言った。
「それにもちろん、ディメンターがあなたを襲ったってことは一切書かれていないの」と、ハーマイオニーが言った。「誰かが口止めしたのよ。ものすごく大きな記事になるはずだもの。制御できないディメンターなんて。あなたが『国際機密保持法』を破ったことさえ書いてないわ。書くと思ったんだけど。あなたが愚かな目立ちたがり屋だっていうイメージとぴったり合うもの。あなたが退学処分になるまで我慢して待っているんだと思うわ。そのときに、大々的に騒ぎ立てるつもりなのよ――もしも、退学になったらっていう意味よ、当然だけど」と、ハーマイオニーが急いで言葉を付け加えた。「退学になるはずがないわ。魔法省が自分たちの法律を守るなら、あなたには何にも罪はないもの」
階段を上がって来る足音がしたので、話題が途切れた。
「う、ワッ」
フレッドが、伸び耳をぐっと引っ張った――そして、大きなバシッという音がして、フレッドとジョージは消えた。次の瞬間、ウィーズリーおばさんが部屋の戸口に現れた。
「会議は終わりましたよ。降りて来ていいわ。夕食にしましょう。ハリー、皆があなたにとっても会いたがってるわ。ところで、厨房の扉の外に糞爆弾をごっそり置いたのは誰なの?」
「クルックシャンクスよ」と、ジニーが知らんぷりして言った。「あれで遊ぶのが、大好きなの」
「そう」と、ウィーズリーおばさんが言った。「私はまた、クリーチャーかと思ったわ。あんな変なことばかりするし。さあ、ホールでは声を低くするのを忘れないでね。ジニー、手が汚れてるわよ。何してたの? お夕食の前に手を洗って来なさい」
ジニーは、皆に向かって顔をしかめて見せると、母親に従って部屋を出て行った。部屋には、ハリーとロンとルナ、そしてハーマイオニーだけが残った。
「あのさ――」と、ハリーがぼそりと言った。しかし、ロンは首を振り、ハーマイオニーは静かに言った。「ハリー、あなたが怒ることはわかっていたわ。無理もないわ。でも、わかって欲しいの。私たち、ほんとに努力したのよ。ダンブルドアを説得しようとして――」
「うん、わかってる」と、ハリーは言葉少なに答えた。「クリーチャーって誰?」
「ここに棲んでるハウスエルフ」と、ロンが答えた。「イカれたやつさ。あんなの見たことない」
ハーマイオニーが、ロンを睨んだ。
「イカれてなんかいないわ、ロン」
「あいつの最大の野望は、首を切られて、母親と同じように楯に飾られることなんだぜ」と、ロンが焦れったそうに言った。「ハーマイオニー、それでもまともかい?」
「それは――それは、ちょっと変だからって、クリーチャーのせいじゃないわ」
ロンは、やれやれという目でハリーを見た。
「ハーマイオニーは、まだ『ゲロ』を諦めてないんだ」
「『ゲロ』じゃないってば!」と、ハーマイオニーが熱く言った。「S・P・E・Wよ。それに、私だけじゃないのよ。ダンブルドアもクリーチャーに優しくしなさいっておっしゃってるわ」
「はい、はい」と、ロンが言った。「行こう、腹ぺこだ」
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