- 壱
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その人は公園の真ん中で、雨など降っていないかのように、ぼんやりと空を見上げていた。時折瞬くその眼は大きく、目の下には黒い隈がある。濡れそぼった髪も黒く、肌の白さを際立たせていた。雨を吸った服が、彼の肌にはりついている。鼻は高く、どことなく日本人ではないような感じを受ける。彼には、只者ではない雰囲気があった。
- 弐
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エルの目が、遠く、虹を突き抜けた向こうを見つめる。懐かしむ様子に、良い記憶なのだろうとわかった。誰に教わったのか気になったが、まだ込み入ったことを聞くのは早い気がして、口を噤んだ。
- 参
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不機嫌オーラを放つ猫背な後姿に、悪いと思いながらも知らず知らず口角が上がる。面白い人だ。同時に、かわいいと思ってしまう。時々見せる、指をくわえる仕草は母性をくすぐるし、今のように感情的になる一面も持っている。こないだの儚げな横顔を持つ人と、同じ人とは思えない。多様な面を持つ彼を、透桜子はもっと知りたくなった。
- 肆
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やはり先ほどのニュースのことか。事件について、自分が知っている情報を話す。今世間で騒がれている、不可解な事件。自分の拙い情報でエルが推理できるはずもなく、その日は「奇妙な事件ですね」とエルが呟くように言い、この話は終わった。
- 伍
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本部を指揮する者としての責任。彼はそれを十分すぎるほど負っていた。エルの横顔は悔し気で、同時に寂しそうでもあった。言葉をかけられない自分が、不甲斐なかった。
- 陸
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隣にいるエルの短冊を見る。彼は流暢に日本語を話すが、彼の短冊には英語でこう書かれていた。
- 漆
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手にぽつりと冷たさを感じて、初めて自分が泣いていることがわかった。エルの世界と自分の世界は交わらない。その事実に、涙が止まらない。彼はそれをいつから悟っていたのだろう。いつから一人で抱え込んでいたのだろう。