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最初に仕掛けてきたのは流河だった。テニスの試合をしないかと誘ってきたのだ。「流河、親睦を深めるためにテニスって、僕の実力知ってて言い出したのか?」
ユニフォームに身を包んだ月が、テニスコートに入りながら言う。流河は歩きながら答えた。
「大丈夫です、夜神くん。私はイギリスのJr.チャンピオンだったことがあります」
嘘か誠か。ここで国籍はイギリスかと聞けば、キラだから探りを入れてると思うだろうか。まあいい、試してみるか。
「流河はイギリス育ち?」
「イギリスには5年ほど住んでいましたが、安心してください。そこからLの素性が割れるようなことは絶対ありません」
(ああ、そう……)
試合はいい勝負だった。勝ちに行こうと攻める月と、守る流河。
この試合が終われば流河はキラ事件に触れてくるだろう。自分にキラしか知り得ない事実を聞いてくるだろう。しかしキラ事件の話をするのなら、少なくとも今キラ事件の指揮を執っているのがあいつであることの証明を求めるのは必然。
(僕が先にあいつに言うべきことは――捜査本部に連れていってもらうこと。やはり勝つには先手を打つことだ)
月は足を踏み込んでスマッシュを打ち、ボールは流河を飛び越えフェンスへと当たった。
「ゲームセット、ウォンバイ夜神、6-4!!」
「さすが夜神くん、負けました……」
握手をしながら流河が言う。
「僕も久しぶりに本気を出したよ、流河。喉も乾いたし、流河に頼みたいこともあるからこの後お茶しないか?」
「ゲームに負けたことですし、聞けることなら聞きましょう。しかしその話を聞く前に、私もひとつ言っておくべきことがあります。私は本当は夜神くんを、キラじゃないかと疑っているんです。それでも聞けることなら何でもお聞きします」
「…………」
「月さーん!」
場違いな明るい声とともに、鈴木リナが近づいてきた。手にはタオルとスポーツドリンクを持っている。
「すごい、かっこよかったよー! これ使って」
どちらも手渡され、礼を言ってドリンクを開ける。飲んでいると流河がリナを見ながら呟いた。
「夜神くん、羨ましいですね。彼女がいるなんて」
「……彼女じゃない」
ちらと横目でリナを見れば、少し恥ずかしがっている様子だった。
(この女、満更でもなさそうだな……)
月は利用できる者のリストに、鈴木リナの名前を付け加えた。
20160507