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センター試験1日目の朝が来た。母親に起こされた月は、玄関の門を出ようとする。「しっかりね!!」
「お兄ちゃん頑張ってねー」
「まだただのセンター試験なのに大げさだな。行ってきます」
応援する家族たちを尻目に、月はリュークと共に試験会場である東応大学を目指した。
試験会場に着いたのは、試験開始10分前だった。教室に着き準備していると、隣に座っている少女が小声で話しかけてきた。
「す、すみません、消しゴム2個持ってませんか?」
月は一応2個持ってきたのを思い出し、消しゴムを差し出しながら言った。
「ありますよ、どうぞ」
「ありがとうございます!」
そして試験が始まった。月は問題用紙を捲る。どれも簡単な問題だった。
頬杖をつきながら回答を考えていると、何かに気付いた試験官がこちらの方にやってきた。
「そこ……受験番号162番、ちゃんと座りなさい」
月はゆっくりと後ろに顔を向ける。
鉛筆の先を二本指で持つ手、机の端に乗った爪先。その男は大きな黒い眼をし、その下には隈があった。お互いに数秒見つめ合った後、月は再び問題用紙へと目を移した。変な奴だ。関わらない様にしよう。
難なく試験が終わり、月は帰りの支度をしていた。そこへ隣に座る少女が消しゴムを差し出してきた。
「本当にありがとうございました、助かりました」
「いえ」
そう言って受け取った後、月は立ち上がろうとしたが、その前に少女が話しかけてきた。
「どこの大学を目指してるんですか?」
「一応、東応大学だよ。君は?」
「わたしも東応大学です! 奇遇ですね」
「そうだね」
「もし、一緒に東大に受かったら……友達になってくれませんか?」
変なお願いだな。そう月は思った。自分でもおかしいと思ったのか、少女は取り繕うように笑う。
「ちょっと変ですかね……でも今、少しつらいので、大学生活は楽しいものにしたいなって」
いじめられているというまではいかないが、人間関係が辛いのだろう。同情するふりをして月は頷く。
「いいよ」
少女はぱっと顔を輝かせた。
「本当ですか? わたし、鈴木リナって言います。あなたは?」
「夜神月。月と書いてライトって読むんだ」
「変わった名前ですね。合格したら、よろしくお願いします!」
20160430
20180726